2011年7月24日日曜日

ファンタジーの世界

                                         Lio (Oita, Japan)




いつもは控えめで、おとなしいシンシアが、授業中、突如むっくりと起き上がり、”Kyokoさん、これは何ですか?”と黒板に向かって、何かを書き出した。


突然の彼女の行動に息をのむ生徒達。






にんべんに・・・・






旁(つくり)の部分が書けずに、往生している彼女に、助け舟をだした。




”あ、もしかして「体」じゃない?こういう字?”


”いいえ、ちがいます。”


”あれ、じゃぁ、「作る」かな?”


”いいえ。違う〜。”


”え〜っと、じゃあねぇ〜・・あ、わかった!「何」!!”


”いいえ。いいえ!”


”えーっ?、じゃ、じゃぁ〜・・”






”ちょっとまって。”






それから皆で息を潜めて待つこと約20秒。
なんせ、彼女が自ら発言するなんて、一世一代のことなのだ。


そして苦心して彼女が書き上げたものは、にんべんに、山が逆さに書かれたものだった。








”あ〜!仙人の「仙」ね!なるほど!(ほっと一安心)でも、どこでこの漢字を見ましたか〜?”


”アニメで見ました。Kyokoさん、せんにんは、何の意味ですか?”


ウッと、思わず答えに詰まる私。


最近、生徒が腕を上げてきて、のっぴきならないことこの上ない。




”えーっと、そのぉ〜・・あ、わかったっ!あのね、仙人は、人間と神様の真ん中にいる人です。山でマヒコ(マジック)を使えるように、トレーニングしています。インドのグルみたいなものかな?あ、わかる?グルって?”


”は〜い、わかります〜。”


物わかりの良い生徒達に救われ、話題は仙人からアニメの話しへと移り、それ以上突っ込まれることもなく授業は無事終了した。


しかし、このシンシア嬢、朝に滅法弱いらしく、毎回微妙に遅刻して来ては、意識も朦朧と座っている。発する言葉はもっぱら、”とても眠いです。”と”お腹がすきました。”の二言のみ。


けれど、授業を理解していないかというと、そうでもない。


アニメ好きが高じて、語彙力も豊富、もともとおっとりした性格なので、普段は聞き役に回ることが多いが、半眼で授業を聞きながらも、彼女の頭の中はファンタジーでひしめいているらしい。


子供の日本語の世界は、実に奥深いのである。




本日のニューワード:http://ja.wikipedia.org/wiki/仙人

2 件のコメント:

  1. こんばんは。BLOGにコメントするのは始めてです。お元気そうで。

    話をよんで、あのアニメではないかと想像しました。鳥山明の『ドラゴンボール』。亀仙人というキャラクターが出てます。道着とかに漢字が書かれているし。

    10年くらい前に学会でサンジエゴに行きました。ちょうど1週間いました。滞在したホテルの多チャンネルのテレビのスペイン語放送の多さにホントに驚きました。その放送の中でスペイン語に吹き替えしたドラゴンボールを何回も放送していました。スペイン語だとこんな雰囲気なんだと面白がって何回も観ました。そんなことを思い出しました。

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  2. ゆうぢんさん:コメントありがとうございます。
    ドラゴンボールか〜。
    そうだったんですね。

    いきなり、いつも半分寝てる子が、ムクッと起きだして、黒板に向かって仙の字を書くので、何かと思いました。(笑)

    けれど、アニメを通じて、日本語学習者が増えることは、うれしいことでもありますよね。

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