2012年3月9日金曜日

確認の時 vol.2

                                                   Megi, mi corazon




さて、事件が起こった日、私は仕事がオフで一人、ドライブを楽しんでいた。いつも疲れた時、心の洗濯に行くビーチに出向いたものの、なんだか、ぴんと来ない。いつもの清らかさがないどころか、海面がざわついて、なんだか物々しくさえ感じられる。 

それで、お茶を飲んでさっさと家路につくことにし、その道すがら立ち寄った相棒のスタジオで、今度は彼とけんかになり、本当に散々な休日であった。 

その翌日、出勤してゲートに向かって歩いていると、セキュリティの男の子がきて、”Kyoko、昨日、日本人がバルコニーから落ちたんだよ。”という。一瞬その場で頭を抱えてしまった。 

実はその2日前、泥酔した白人客が転んで出血、その場にたまたま居合せた私が介抱し、病院に行く必要性があったため、一緒にいたはずの奥さんを探してホテル中を探しまわる騒動があったばかりだったからだ。(ちなみにその客は翌日チェックアウトしたのだが、もちろん一言のお礼もなく帰って行った。恐らく泥酔して覚えてなかったのだと思われる。) 

お世辞にも、血まみれの人を介抱するのは、決して気持ちの良いものではない。けれど、それが仕事となればまた別の話で、要は、自分なりにその時に出来る、精一杯のことをしたのだが、それがすべて報われないのも、この仕事の特徴だと言える。 

そういう訳で、転落の話が出た時、私の脳裏に最初に浮かんだのは、”また?!”だった。 


しかし、その白人客とこの日本人客には大きな違いがあった。 

詳細は、この時点では言及を控えるが、確実に言える事は、前の日記にも書いた通り、謙虚でいること、感謝の気持ちを忘れないこと、そして自己責任を取ること、この3つが、回りの状況を180度変えてしまったのであった。 

ホテルでの滞在期間はとうに過ぎてしまったにも関わらず、未だにホテルのエグゼクティブをはじめ、私たちスタッフが彼らを見舞うのも、一重にその奥様の態度・・深々と何度も私たちスタッフに頭を下げ、何度も丁重にお礼を言い、チェックアウトをする前に手渡して頂いた1枚の手紙・・が我々の彼らへの対応を一転して変えたように思う。 

白人客が多いこのリゾートで、私たちがクレーム時に宿泊客に対して取る一番重要なポイントは、”私たちは、リゾートに対して今後一切のクレームを出しません。”という証書にサインをして貰う事である。 

その理由は、ご想像通り、自己責任を取らず、問題の原因がこちら側の落ち度であるとして、我々を訴える人が絶えないから。 

その対応に、私たちは日頃画策している訳なのだが、この日本人客たるや、ホテルに対してクレームをするどころか、その真逆ー度重なるお詫びやお礼など、その慎ましやかな態度が、元々情に熱いメキシコ人の胸を強く打ったという次第。 

正直、私も最近では度重なる宿泊客のわがままに疲れが重なり、ついついぞんざいな対応をしてしまっていたことも確かである。 

しかし、人生毎日が修行の場なのだ。 

また初心に立ち返り、社会奉仕が出来る立場にいることに深く感謝をして、日々精進したいと思う今日この頃であった。 

ー終ー 


追伸:なんだか今年は、本当に集大成的なことが多いですね~。

0 件のコメント:

コメントを投稿