2011年8月7日日曜日

ロシア人、やってくる Vol.4



ところで人のことはさておき、自分は一体何者なのか?
これは、長い間の疑問であった。

人のことを観察するのは簡単だが、果たして自分が何を考え、実際はどういう人間なのか、客観的に分析するのは案外難しい。

正直、自分がどんな仕事に向いているかさえ、私には長いことわからなかった。
それ故、手を替え品を替えては、あれこれ試してみるしかなかったし、実際にそうやった。

一番向かなかったと思うのは、生産性のない仕事だった。

自分のやっていることが、何かしら誰かの役に立っているとか、状況を良くすることに繋がっているということが感じられる仕事には、時間をいくら費やしても気にならなかったが、ただ、仕事をやっているふりをするとか、時間をそこで費やしているだけ、みたいなことにはただの1分でも我慢がならなかったし、”何も考えずに言われたことをやる”というのも、自分には無理だった。

だから、合わない仕事をしている時は、決まって体調を崩したり、自律神経系を病んでいて、毎日がそんなに楽しくもなかった。

まぁ、そういう状況の中でも、一見見ただけではわからない、面白い人が結構回りにいたのも事実だけど。

彼らは個を消す術をわきまえていて、それを全面に押し出さなくてはいけないエゴもない、ある意味、大人なのだと今にして思う。彼らは私のように、しょっちゅう病気で休んだりもしていなかった。

日本のサラリーマンのことを揶揄する人もいるけれど、私は、基本的に、彼らは現代版サムライだと思っている。

和を大事にし、一歩下がって人の意見に耳を傾けることを知っていて、落ち着いて、静かに微笑みながら、必要な時にさりげなくアドバイスをくれるのは、この時代に親しくなった人たちだ。

逆に、今関わっている海外での撮影の仕事を含めた、クリエイティブ系と言われる人々は、油断も隙もない。

日常の場では、わがままだったり、ナルシストだったり、情熱の固まりに、こちらが焦げ付きそうな人もいたりと、刺激の強過ぎることも多々あった。

けれど、一旦現場(舞台)に入れば、その誰しもが何かしら、キラリと光るものを持っていて、それまでの苦労も一瞬にして消え去ることが多かったのも、事実である。

御光が差し、神と一体化しているんじゃないかという人にも出会ったし、強烈な一言に、人生観ががらりと変わる体験をしたのも、この類いの人だった。

また、収入のことを考えなければ、サービス業も基本的には好きだし、日本語を教えるのも楽しい。はたまた、一時は職人系になろうと思い立ち、部屋に閉じこもって、夜昼構わず、しこしこともの作りに勤しんだこともあったけど、何日かすると、憑き物でも落ちたかのように、外の世界に再び飛び出して、ほっとするのであった。

果たして、どんな世界にも感心する部分と、頂けない部分があり、甲乙はつけがたかった。

それで、いつまでも色んな世界を渡り歩き、結局出た答えはというと、色んなことを、掛け持ちで少しずつやりつつ、自分の中の均衡を取るという手法だった。

要は、勝手に作り上げた自分像を捨て、自分と正直に向き合い、限界は潔く認めるということ。

だから今は、撮影の仕事が入れば、体力、時間とも許す限り、出来ることをする。他のクルーみたいに、日の出から夜中まで働くようなことは絶対しない。
体力の限界を超えたところまで自分を追いつめれば、ただ不機嫌かつ疲れきった自分を持て余すだけだ。
そのかわり、見落としがちな経理作業や、食事管理、安全管理に目を光らす。

日本語教師も同じことだ。

たまに、文法や教授法について、信じられないくらいの情報を持っている、真の語学のエキスパートの話を聞くけれど、じゃあ自分も頑張ってそのレベルまで到達しようかというと、そんな気はさらさらない。

だいたい、自分は先生なんて呼ばれる柄ではないし、文法や助詞の研究に時間を掛けるなら、その時間を使って、ゲームをしながら生徒達に形容詞や動詞をより多く覚えてもらい、自分を表現することを楽しんで欲しい。

そして、チャンスを見つけて日本にも是非行ってほしいから、何かしら引っかかりそうなことはお知らせする。
例え、それが1000人に1人にしか受からない、奨学金留学生の話でも、どうなるかなんて、わからないではないか?!
なんでも、気になることは、チャレンジしてみればいいのである。

後先なんて考えていたら、人生、何も出来ないまま終わってしまう。
どんどん試して、どんどん失敗して、躓きながらも前に進んでいければ、それでいいではないか。

以上、いびつだけれど、これが私の寄り道人生で得た、非常にシンプルかつ、大切な自分との「お約束」である。

持続力にも専門性にも欠けるけど、それでも、何かしら人の役に立つ部分があって、毎日健康で楽しく食べているんだもの。まずは良しとしようじゃない!

(続く)


3 件のコメント:

  1. というか、あなたのようになんでもできて、パワーのみなぎった、行動力の塊みたいな人はいないわ。本当にいったいあなたは何者!?

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  2. hajimemashite ひょんな所からたどりつきました。                               
    そしてちょっと元気になりました。

    素敵なブログですね。

    どの記事もすごく良かったです。

    あの記事の転載は可能ですか?

     

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  3. 明里さん:

    お返事遅くなりました!アメリカからです。

    コメントありがとうございます。

    記事の転載は残念ながら受け付けてませんが、

    ブログアドレスの紹介であれば喜んで!

    これからもどうぞよろしくお願いします。

    mama taponeさん:

    久しぶり~。

    書きたいことがたくさんあるのですが、それはまたメキシコに戻ってから。

    これからL.Aバストリップの旅に出かけてきます。
    貧乏人には貧乏人なりの楽しみ方があって楽しいわ。:)

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