Helmano de gatitos |
休みの日を利用して、久々に出掛けた町で、やってしまった。
何を?大失敗を。
この町で、私には3つのタスクがあった。
1.プエブロ(町中)でリボンを見つけること
2.持ってきたプレゼントにリボンを掛けて、長年来お世話になったイタリア人カップル に、お礼方々その品を渡す(彼らは数日後、新天地に向けて旅立つ予定)
3.この町に住む友人の太極拳のクラスに参加する
寝坊して時間が差し迫っていた上に、道中飲んだコーヒーが利いたのか、猛烈に用を足したくなり(失礼!)、緊急トイレまで探さなければならなくなったものだから、焦った私は、友人に電話して、文房具屋の場所を尋ね、(小さな町で、こういう物を見つけるのは、結構大変だったりする)更に、どこかで用を足せないか、目をキョロキョロさせていた。
幸いに、小さな文房具屋が、程なくして見つかり、取るものも取りあえず、しょっぱなから、”緊急事態発生、トイレ貸して下さい!"と切り込み、用を足してホッと一息ついたところで、さぁて、どのリボンにしようかな、いやまてよ、こういう場合は、やっぱりモノと合わせて色合いを見た方がいいなと、一旦店を出て、車に戻って仰天。
なんとなーんと、鍵が差さったままロックしてしまっているではないか!
いくらメキシコがカジュアルとはいえ、お店に入って、商品を手に取るよりも前に、人の家のトイレに駆け込み、更には、今度は車のドアを開けられないとは、さすがの私も言い出しにくく、まずは、ドアというドアを全て確認するが駄目。
あ、待てよ、そう言えばと思い、一カ所、買ったときから壊れてて、無理矢理いつも手で押し上げている、手動式窓をこじ開けようと頑張るも、あまりにも雨など振り込んで厄介なので、先日徹底的に開かないようにしたのが災いとなり、今回ばかりはウンともすんとも言わない。
これが家に近ければ、相棒に電話して、誰かに来てもらうか、どこに電話したらいいのか聞いて貰えるけど、なんせ2時間も離れた町のことなど、彼が知ろうはずもない。
仕方がないので、努めて明るく、そして少し控えめに、先ほどの店に入って行き、"お兄さん、ちょっとこちらへ。"と、笑顔で手招きして、彼を車のところまで誘導することに成功した。
中をのぞいた若者店員は、"Hijole!(わっちゃ〜!)"と目を丸くする。そこで、すかさず、”ねー、あれ持ってないかしら?えーっと、ほら、あの服を掛けるやつ、スペイン語でなんて言うんだっけ?”と身振り手振りで尋ねると、わかったようなわからないような顔をして、一旦戻って持って来たのは、お箸より若干長めの棒。
いや、こんなんじゃなくって〜!とすんでのところで駄目出しをしつつ、いやいや、こちらは頼んでいる身なのだから、ここは受け身の姿勢でと、一応、隙間から窓のハンドル部分を突いてみるも、もちろん、そんなもので動く訳もない。
やっとハンガーに相当するガンチョ、という言葉を思い出し、”ガンチョでね、中のレバーを開けようと思うんだけどね。”と同意を求めようとするも、そんなものはない、とのお答え。
いやいや、ここで諦められては困るのだ。
”あるある!”と無理矢理探しに行かせ、ふと振り返ると、隣の洗濯物屋らしきおばさんがこちがの様子を伺っている。そこで今度はおばさんを手招きして、同じように車の中を見せると、おばさんも、先ほどの店員と同様、”あらら〜!”と声を上げる。
すかさず、”ね、ガンチョない?ガンチョ??”と聞くと、おばさんは、店の中にいた小さな娘に、”ガンチョ取ってきて!”と数件先の、店に取りに行かせたのだが、その娘が持ってきたものは、プラスチック製ハンガー。
うーん、これじゃぁ駄目なんだよなぁ〜。とおばさんと目で会話。
と、そこに先ほどの、文房具屋の青年が再び現れる。手には、太めの針金のコイルを持っているではないか。
”おぉ〜、これよ、これ!”
大張りきりで、針金を差し込む青年。ところが、私の車は1984年製の、超アンティック車であるゆえ、窓の開閉が、いまだに手動式なのだ。しかも、その窓を開けようとすると、針金で引っ掛けても幅が足りなくて、どうしても開かないのだ。(あとで相棒に聞くには、盗難防止のために、わざとこういう風になっているらしい。)
開きそうで開かない窓。
ジリジリとしながら、3人で代わる代わる試してみるも、びくともせず、ふと顔を上げると、3件先の肉屋の主らしき男が店先に出て、こちらを眺めている。
そのうちに、買い物途中のおばちゃん達が、通りかかり、”あらら〜。”などと、一言づつ感想(?)を述べては、その場に居座るので、ギャラリーまでできちゃって、なんだか一大事に。
と、その時、背後から、”いやいや、窓じゃなくて、鍵よ、鍵。”と声がする。
顔を上げると、そこには、どこから現れたのか、ダイビングショップの制服を来たおじさんが立っている。
おじさん曰く、”窓じゃなくて、あの鍵を取ればいいんだよ。”と、隙間が開いた方の窓から見ると、更に奥手にある鍵を差す。
近い方の窓を開けることばかり考えていた私に取っては、目から鱗の発言であった。
近い方の窓を開けることばかり考えていた私に取っては、目から鱗の発言であった。
”窓を開けるのは、難しいんだよ。貸してみな。”と、彼は針金を手にすると、先をUの字に曲げ、まるで縁日の鉄砲当てで、商品を狙うプロのごとく、隙間からシュルシュルシュルと、奥まで延ばしたかと思うと、ものも見事な早さで、鍵を引っかけ、さっと抜き取ったのである。
その所要時間たるや、わずか20秒。
”おぉぉ〜っ!!”
ざわめく群衆。そして拍手と笑顔。
”ありがとう、皆さん、ほんとにありがとう!”
この国の良いところは、人々に時間と人間的余裕のあることだと思う。
1日に5回は、”何でこんなことに時間掛けるかなぁ〜!?”とイラっと来る私であるけれど、こういう時、見知らぬよそ者外国人の私に対しても親切にしてくれる、その余裕と人間的優しさはほんと、身にしみます。
しかし、マヤ人の過去の栄光は歴史にもよく知られた通りであるけれど、寄らば文殊の知恵とは良く言ったものです。
かくして初太極拳も経験出来、また、リボン付きのプレゼントも無事渡せ、なかなか幸せな休日となりました。
めでたしめでたし。
追伸:
最近、ビニール張り黒椅子を、一気奮発して買ったのだけど、猫が爪を研ぐものだから焦り、うちに掃除に来るおばさんに助けを求めたら、バスタオルでぐるぐる巻きにされて、”これで良し。”と、満足げに言われてしまった。
いや、あの、見てくれが気に入ったから買ったんですけど、なんて怖くてとても言い出せない。もちろん、彼女もマヤ系だったりします、はい。
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