2012年10月10日水曜日

進化 vs 人間力・続










この前のお話

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が、同じ日の夕方には、私の変身作戦は、いとも簡単に終わってしまった。


薬に、皮膚が反応を起こしてしまったのである。


最初は気のせいだと、やりすごそうとはしたが、体はどこまでも正直だった。


結局夜を待つまでに、まぶたは痛痒くなり、それに加え、眼球が、火でも吹いたかのように、真っ赤になってしまったのだ。


昔から言われているように、美しくなるにはそれなりの代償というものが必要である。


しかし、私には、そこまでの根性が足りなかった。



結局、まつげ伸ばし作戦も失敗に終わった今、私は今後も、一生化原型を保ちつつ、化石時代の産物として、生き続けていくのであろう。嗚呼・・





さて、その後戻った、久しぶりの故郷は素晴らしかった。


真夏に帰るのは、実に久しぶりのことだったが、蝉が鳴き、太陽の光を受けて、美しく
そびえる山を背景に、稲穂が青々と揺れるのを見るのは、本当に心地よかった。


日に焼ける事も忘れて、毎日自転車で、あちこち出掛けたので、最終的には、メキシコにいる時より、ずっと黒くなってしまった。


畳の上に胡座をかいて、スイカを食べていると、メキシコのことが遥か彼方に思われる。



なんで、あんなに遠いところに住んでいるんだろう、と自分でも本当に不思議に思え
ども、仕事はむこうにあるので仕方ない。


子供達も日本のお土産を楽しみに待っている。


短い帰国ではあったが、年々重くなる腰を上げて、大きな荷物と共に、再び飛行機に乗り込む。


今回は、ホノルル経由でL.Aに戻り、翌日メキシコに飛ぶというルートだ。


実はハワイは、昔から私の憧れの土地であり、窓側に確保した席から、なんとも落ち着かない気持ちで、外を眺め見る。


福岡からホノルルまで、約8時間。
悪くない。全く悪くない!


日本から、最も近い楽園の土地。


いつの間に寝入ったのか、ふと目を覚ますと、眼下には、美しい島が広がっていて、
はっと息をのむ。


バリとも、メキシコとも違う南国の土地。


青い海はもちろんのこと、山。


そう、山と海とのコントラストがとっても美しいのだ。



食い入るように眺め見ることしばし。


機体はホノルルに着陸する。


次の乗り換えまで、約2時間。


外には出られないが、憧れのハワイの空気を吸えるだけでも、ありがたい。




まずは、別のターミナルまでバスに乗る。


運転手は、どうみても、ローカルハワイアンで、乗客はすべて日本人。


ここぞとばかりに、隣を陣取って、質問を開始する。




”ね、あなた、ここで生まれたの?”


”で、どう?ハワイの暮らしぶりは?”


”気候は、いつもこんな感じで爽やか?冬は、やっぱりちょっと寒いの?”


”食べ物は?ここって、自分で野菜育てられたりするわけ?”





立て続けに質問するも、相手は生粋の南国人。


のらーりくらりとのんびりムード。


こちとら、5分程度の乗車時間に、すべての基本情報を仕入れねばと、鼻息も荒く
意気込んでいるというのに。


しかも、何かの拍子に、こちらを見てにっこりとした笑顔を見て、はっと息を飲む。



ブルータス、お前もか!




顔は、これ以上ないくらいに日に焼けて黒いのに、ひとたびにっこりと口を開けるや、
そこには、燦々と光り輝く白い歯がキラリ。


それも、普通の白ではない。


暗闇のディスコで、そこだけ光ってる、あの蛍光の白!


そのコントラストや、きれいを通り越して、違和感120%。


お世辞にも、裕福な階級とは思えないが、先進国の、真っ白ブリーチ歯ブーム(?)は、一般庶民レベルにまで浸透していたのである。





そうこうするうちに、バスは到着ターミナルに終着。


今度は、ここで一旦荷物をピックアップした後、出発ゲートに行くことになる。


早速、荷物受け取りカウンターに行くと、人また人!


しかも、その殆どが日本人で溢れている。



右を見ても日本人、左を見ても日本人。


子供連れ、カップル、中にはお年寄りまでいて、さすが、日本から近い、人気のリゾートだということを思い知らされる。


が、問題は、彼らが、「海外にいる感覚が、皆無に等しい」ことにあった。



グループで群がって、通路の真ん中で、人の流れを完全に塞いでいる。


人がカートを押しているにも拘らず、それに気付きもしなければ、気付いても、避けようともしない。


危機管理能力も何もあったものではない。


それに反して、こちらは、向こう1年分の食料、プラス生活物資80キロを持っての、
サバイバル大移動である。


こういう輩に裂く時間はないので、カートを左右に急カーブしながら、やっとの思いで
荷物の置き場まで持って行くと、そこには、渦高く山積みされたスーツケースが、X線検査を待つ為、長蛇の列に並べられているではないか。


その数や、もう仰天の域である。


”ね、私の飛行機、1時間後に経つんだけど、間に合う!?”


殺気立った雰囲気の中で、作業するローカルに声を掛けるも、人でごった返す喧噪の中、投げるように荷物を並べる係員への私の言葉は、全く届かないようで、何の返答も得られない。


しばらく呆然とその光景を眺めていたが、我に返り、航空会社のおばさんに助けを求め、彼女に係員に声を掛けてもらうことで、一件落着。


いやはや、さすが人気の観光地だけある。


忙しさぶりが、ただ者ではない。


しかし、あそこで働く人々の心境たるや、はたまた、そのストレス値たるや、どれだけ大変なことか・・




あれ?ここって、楽園じゃなかったんだっけ?





さて、その後は、やっと出発ターミナルに向かう。


外に面したターミナルから、多い茂る木や、中庭の小さな日本風庭園を見つつ、爽やかな風に当たっていると、なるほど、この気候はいいなぁと実感する。


置いているお土産さえ、違う。


なんというのか、メキシコのそれとは、クオリティが全く違って、一つ一つがシャレているのである。


ついつい、あれも、これもと選んでいるうちに、破産しそうな勢いになってきたので、
手を止めて、レジへと向かう。


ここでも店員はとても忙しそう。


ピッ

ピッ

ピッ


店員が、商品をスキャンする度に、何かの音がする。


ピッ


”ファイブ・ダラー・フィフティ・セント”



あれっ?!レジが喋ってる!?!?


ピッ


”セブン・ダラー・トゥエンティ・ファイブ・セント”



”あはは、ちょっとー、レジが喋ってるよ〜!”



店員に笑い掛けるも、無表情な彼からの返答は、何もなかった。


ピッ


セブン・ダラー


ピッ


フォー・ダラー・サーティ・セント


そして最後に機械音は合計金額を延べ、無言のうちに、レジでのやり取りは終了した。




おつりを間違える店員用に作られたのか、それとも、観光地ゆえに起こりがちな、コミュニケーションミスを防ぐために、開発されたのか、いずれにしても、時代は、ここまできてしまったようである。







この世には、美しい自然や景色が5万とあり、私には、まだまだ行ってみたいところがたくさんある。



しかし、そうするには、様々な人間界の関門をくぐり抜ける必要があるとわかった今、
あんなに盛り上がっていたテンションも、すっかり冷め、早く飛行機こないかな、と思ってしまうあたり、旧人類の、進化発展ゾーンへの復活は、まだまだ遠くになりそうな気配である。





土ぼこりの舞うメキシコの空港に到着た瞬間、再びテンションが上がったのは、
言うまでも、ない。











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